まずはじめにキリンの調査報告を本書に記すにあたって、 古
龍種に分類することに対し異論を唱える者が少なからずいるが、で
は一体この生物についてどれだけのことが分かっているのか?
我々が住むシュレイド地方はもちろん、 辺境地域に生息する進化系
統のどれにも当てはまらないではないか。 一見するとケルビのよう
な姿かたちをしているが、それら偶蹄目とはまったく似ても似つか
ぬ四肢をもち、性格も行動もまったく正反対ときている。 しかも、
雷の力を司るなど、そんなことをできる生物がどこにいるだろうか?
(稀白竜上科のフルフルはまた別の話である)
そもそもキリンなどという生物は存在するのか、という疑問につ
いては断固として受け付けないのであしからず。もし疑うのであれ
ば 小職の真っ黒に焦げ、大きな穴の開いたランゴメイルを心ゆく
までご検証なさるがいい。 これは、 “まぼろしの獣” キリンの電撃と
角によって傷つけられた由緒のある証拠品なのだから。
繰り返すが、キリンが存在することについては疑いようもない事
実であり、既存の進化系統に当てはめることすらできない。と、
そうは言ったものの、あまりにも目撃情報が少なく、証言も曖昧な
のである。 ただ、それらの情報に共通していることは、キリンが出
現する予兆として、 天気が良いにもかかわらず空がゴロゴロと音を
立てていたという。 さらに、 雷が落ちる前のように空気がピリピリ
とし、それが肌に感じられるとか。 実際、 キリンは電撃を放ってく
るのだ。いや、雷を操り対象に落としてくるという表現のほうが適
切であろう。 なかには、キリンが天に吼え雷を落とすのを見た、と
いう者もいる。 たまたま天候と出現時の条件が重なったのではない
か、という説もあるが、 キリンの怒りに触れ、その雷により壊滅さ
せられた村の伝記も残されていることから、偶然ではなく、 キリン
と雷のあいだには深い関連性があると考える(資料性には乏しいが)。
まだまだ研究と調査が必要ではあるが、じつはつい最近、 キリン
に関する気になる情報を入手した。 遠い東の島国に同じく “麒麟”
と呼ばれる伝説の獣がおり、それは雷を司るという。もしかすると、
その島にキリンの生態を解き明かす何かがあるのかもしれない。 次
回の古龍調査白書の提出までに、 その結果を報告したいと思う。