そこは、誰にも知られぬ場所一
何もない。
海も空も。
天と地、上下さえもなかった。
「あ?」
ヴェガはようやく、己が置かれている立場に気付いた。
その場所では、星も輝かない。
光がないので、色もなかった。
何も存在していない、 完全なる "無。 だったのだ。
「おいおい……」
これは不味いのではと、ようやく気付くヴェガである。
何もないから、指標がない。
動いてみても、進んでいるのか後退しているのか、それすらも判別出来ない状況だった。
魔素もない。
ヴェガから垂れ流されていた魔素が拡散しても、何かに当たる気配はなかった。
もしかしたら、 時間すら流れていないかも知れなかった。
突如、 ヴェガの心に恐怖が湧き出た。
自分が、 完全なる孤独であると理解してしまったのだ。
する事が何もない。
出来る事も何もない。
「おいおい、待ってくれ。 どうなってんだ? クソったれが、誰かいねーのか、ゴラァーッ!!」
恐怖は、怒りに変わる。
「ちくしょうがァ!! 俺が何をしたってんだ、ふざけんじゃねーぞ!!」
誰もいない虚空に向けて、ヴェガが吠ほえる。
力の限り怒鳴る。
しかし、誰も何も答えない。
反応は、ゼロだった。
誰もいないので、威張れない。
虚勢を張っても意味はないが、 ヴェガは試してみた。
「舐めるんじゃねぇぞぉーッ!! この俺は不死身のヴェガだァ! 全世界で最強不滅の―」
そこまで叫んで、急に虚しくなったヴェガである。
怖くなった。
そう、 ヴェガは不滅なのだ。
それを思い出してしまったのである。
「おいおいおい、ちょっと待て。 ちょっと待ってくれよォ......」
全エネルギーを放出するように、 自分自身を中心とした大爆発を起こしてみた。
しかし、何も変わらなかった。
ヴェガは無事に復活を果たした。
そして時間が経てば、 何もかも元通りで......。
ヴェガには自慢の、尽きる事のないエネルギーがあった。 だから、どれだけエネルギーを放出し
ようとも、無尽蔵に湧いてくる。
むし魔ま王おうゼラヌスを喰った成果だ。
今となっては、それが恨めしいヴェガである。
何しろヴェガの肉体は不滅であり、エネルギーも尽きない。
そうなると "自殺する事さえ出来ない。 という事だった。
「え?嘘だろ、 ちょっと... そんな......待てよ...... 待てって……………」
えんさの声は、 誰にも届かない。
いつしかそれは嘆きに変わり
誰もいない孤独なその場所で、 自分を終わらせる事さえ叶わずに、ヴェガは己の愚かさを噛み締
める。
一人寂しく、 いつまでも、いつまでも......。